リスティング広告の手動入札と自動入札の違い【何を選べばいい?自動入札に切り替えるのはいつから?】
リスティング広告では手動入札と自動入札という考え方が存在します。どの入札戦略を選ぶかで成果が決まりますが、入札戦略の選び方や切替タイミングが分からずお困りの方も多いかと思います。
そこで本記事では手動入札と自動入札の違いを解説しつつ、選び方や切り替えるタイミングをご紹介します。リスティング広告の入札戦略でお困りの方はぜひ最後までご覧ください。
目次
GoogleやYahoo広告における入札戦略とは
「何を重視して入札オークションに参加するか」を決めることを入札戦略と言います。
もう少し詳しく解説していきます。
リスティング広告では「検索結果画面」や「特定メディアのサイドバー」などあらゆる場所に広告を掲載することができます。Googleが抱える掲載枠であれば「Google広告」として、Yahooが抱える掲載枠であれば「Yahoo広告」として広告を出稿する形になります。
また、これらの掲載枠に対して、同じように競合も広告を掲載しようとするため、各プラットフォームでは入札形式でどの企業の広告を掲載するか判断しています。
よって、GoogleやYahoo広告などリスティング広告では、競合との入札オークションに勝つ必要があります。その際に「何を重視して入札オークションに参加するか」を決めるのが入札戦略です。
補足:入札オークションとは?
各プラットフォームでは広告の表示機会が発生するたびに、どの広告をどの順番で表示するかを決める「入札オークション」が行われています。美術品などのオークションとは異なり、最高価格で入札した参加者が勝つ仕組みではなく「広告ランク」が掲載可否と掲載順位を左右しています。
よって、たとえ競争相手が自分より高い入札単価を設定していても、広告やランディング ページの質が高ければ、有利な掲載枠を(費用を抑えたまま)獲得することが可能です。
自動入札の概要と種類
ビジネス目標 | キャンペーン目標 | 入札戦略 |
販売、利益、有望な見込み顧客の増加 | 固定予算または固定広告費用対効果で、できるだけ多くのコンバージョン値を獲得する
|
コンバージョン値の最大化 (目標広告費用対効果を任意で設定) |
販売、利益、有望な見込み顧客の増加 固定予算または固定広告費用対効果で、できるだけ多くのコンバージョン値を獲得する 一定の予算またはコンバージョン単価で、できるだけ多くのコンバージョンを獲得する |
コンバージョン数の最大化 (目標コンバージョン単価を任意で設定) | |
ウェブサイト訪問者の増大 | 特定の予算でできるだけ多くのクリック数を獲得する | クリック数の最大化 |
認知度の向上または安定化 | 希望する場所(ページの上部など)やインプレッション シェアでオークションに表示する | 目標インプレッション シェア |
出典:Google 運用ガイド: スマート自動入札の効果的な運用
ここからは入札戦略の1つである「自動入札」について解説していきます。媒体やメニューにもよりますが自動入札には8種類あります。
1.クリック数の最大化
2.目標インプレッションシェア
3.目標インプレッション単価(tCPM)
4.目標コンバージョン単価(tCPA)
5.目標広告費用対効果
6.コンバージョン数の最大化
7.コンバージョン値の最大化
8.広告視聴単価制(CPV)
自動入札の概要
自動入札をひと言で説明すると「選択した目的に沿って入札価格を自動的に調整し、もっとも成果が出るような挙動を取る」仕組みです。
Googleリスティング広告(検索連動型広告)を例にすると、Googleリスティング広告では「曜日」「時間帯」「デバイス」「性別」「年齢」の粒度で入札価格を操作することが可能です。
例えば、男性の方が利益率が高い場合、男性に対する入札価格を強化することで配信を強めたりすることができます。
こうした作業を全て手作業で完璧に実行できれば、広告の費用対効果を理論上、最大化することができますが、膨大な作業となるため現実的ではありません。
そこで自動入札を活用すると、このような「〇〇ユーザーに配信した方が成果が出る」を媒体AIが自動的に判断し入札価格を調整してくれます。
自動入札戦略の種類
ここからは自動入札戦略の種類を紹介します。「なにを重視するか」で選ぶべき自動入札戦略が変わります。目的別にまとめているので参考にしてみてください。
<クリックを重視する場合>
①クリック数の最大化
クリック目標に合わせて入札単価を設定する方法です。1 日の平均予算を設定するだけでその予算内で最大限のクリック数を獲得できるよう、各プラットフォームが入札単価を自動的に調整してくれます。
<露出度を重視する場合>
①目標インプレッションシェア
リスティング広告(検索連動型広告)で使うことができる自動入札戦略です。検索行動を起こすユーザーにたくさん露出したい場合に有効です。検索結果ページの最上部、上部、または任意の場所に広告が表示されるように自動的に入札単価が設定されます。
②目標インプレッション単価(tCPM)
インプレッション単価の目標値が決まっている場合に有効な自動入札戦略です。インプレッション単価とは「インプレッション1,000 回に対して発生する広告費用」を指します。この入札戦略では、キャンペーンのユニークリーチが最大化されるように入札単価が最適化されます。
<コンバージョンを重視する場合>
①コンバージョン数の最大化
予算全体を使いながらコンバージョンを増やしたい場合に有効です。特定のコンバージョン単価を目指すのではなく、コンバージョン重視で最適化して予算を使い切るような挙動を取ります。
②目標コンバージョン単価(tCPA)
コンバージョン単価の目標値が決まっている場合に有効な自動入札戦略です。指定した目標コンバージョン単価でコンバージョンを最大限に獲得できるように入札単価が自動的に調整されます。実際の入札単価はコンバージョンによって設定した値より上下する場合があるので注意が必要です。
③コンバージョン値の最大化
1や2の派生形がコンバージョン値の最大化です。広告管理画面で「コンバージョンに対する価値」を設定することができ、それをコンバージョン値と呼んでいます。コンバージョン値を設定することで、発生したコンバージョンの数だけでなく、コンバージョン値の高いコンバージョンを特定して焦点を当てることができます。
例えば、資料請求と無料体験申し込みでは「購買意欲」に違いがあり、ひとえにコンバージョンと言っても価値が全く異なります。こうした価値の違いを考慮して、媒体AIに学習させることができる機能です。
④目標広告費用対効果
3の派生形が目標費用対効果です。設定したコンバージョン値を「売上」と仮定し投資収益率が最大になるように入札単価を自動的に調整してくれます。
つまり、ユーザーが価値の高いコンバージョンに至る可能性が高いと判断された場合は入札単価が高くなり、その可能性が低いと判断された場合は入札単価が低くなるイメージです。純粋にコンバージョンの「数」だけを重視するよりも、「売上」を重視して広告を運用したい場合に有効です。
<動画の視聴を重視する場合>
①広告視聴単価制(tCPV)
動画広告を掲載する場合は広告視聴単価制(CPV)を使用できます。
なお CPV の場合は、動画の視聴以外に、Calls-to-Action(CTA)オーバーレイ、カード、コンパニオン バナーのクリックなども課金の対象になります。目標とする視聴単価が決まっている場合に有効です。
手動入札と自動入札の違い
次は各プラットフォームのAIに入札価格を最適化してもらう「自動入札」と、それらを全て手作業で実行する「手動入札」の違いを解説していきます。大きく2つの違いがあります。
1.入札に利用されるシグナルの数
2.入札単価を調整できる範囲
入札に利用されるシグナルの数
手動入札と自動入札ではオークション時に活用されるシグナルが異なります。
自動入札では媒体が持っているリアルタイム性のあるシグナルを活用できるため効果が高くなると言われています。自動入札で使われるシグナルは以下のとおりです。
・デバイス
・所在地
・地域に関する意図
・曜日・時間帯
・リマケリスト(例:サイト訪問者が商品を閲覧しショッピング カートに追加したのが先週であれば、先月だった場合よりも近々購入に至る可能性が高いため入札単価の調整が行われる)
・広告の特性(モバイルアプリ用かどうか等)
・ブラウザーやOS
・実際の検索語句 ※1
・プレースメント(例:ある消費財ブランドの場合、ニュースサイトよりも eコマースサイトとの関連性が高く、コンバージョンに至る可能性がより高いため入札単価の調整が行われる)※2
・サイトでの行動 ※2
・商品属性 ※3
・季節性(例:年末商戦期に検索しているユーザーはコンバージョンに至る可能性が高いため入札単価の調整が行われる)※3
※1-検索キャンペーンのみ
※2-ディスプレイ キャンペーンのみ
※3-ショッピング キャンペーンのみ
自動入札ではこれらのシグナルを媒体AIが自動的に分析し、過去の実績や媒体として蓄積されたナレッジをもとに最適化してくれます。
一方で手動入札であれば、これらのシグナルを自ら捉えて、手作業で入札価格を調整する必要があります。
また、自動入札では「過去の検索行動」「サイトでの行動」をシグナルとして活用できますが、手動入札ではそれらを活用することができません。
これらを踏まえると、手動入札と自動入札では、活用できるシグナル数と精度に差があると言えます。
入札単価を調整できる範囲
手動入札と自動入札では入札単価を調整できる範囲が異なります。
自動入札はシグナルごとの細かい調整を媒体AIに任せる仕様上、各ターゲティングによる入札価格の調整ができなくなるので注意しましょう。
以下が調整可否の一覧表です。
デバイス | 地域 | 曜日時間帯 | リマケリスト | |
クリック数の最大化 | 調整可 | 調整可 | 調整可 | 調整可 |
コンバージョン数の最大化 | 不可※ | 不可 | 不可 | 不可 |
ページ最上部掲載 | 不可※ | 不可 | 不可 | 不可 |
コンバージョン単価の目標値 | 調整可 | 不可 | 不可 | 不可 |
広告費用対効果の目標値 | 不可※ | 不可 | 不可 | 不可 |
コンバージョン価値の最大化 | 不可※ | 不可 | 不可 | 不可 |
※「引き下げ率:100%」に設定した場合のみ有効となり、該当のデバイスには広告配信しなくなります。
入札戦略の使い分け・選び方
入札戦略は広告配信で重視する指標や目的、キャンペーンの実績に応じて使い分けることが重要です。
まず大きなところとして「クリックを増やしたいか、コンバージョンを増やしたいか」で分けられます。クリックを増やしたい場合は拡張クリック単価(手動入札)やクリック数の最大化(自動入札)がおすすめです。
一方で、コンバージョンを増やしたい場合は、コンバージョン数の最大化(自動入札)や目標コンバージョン単価(自動入札)を選びましょう。
なお、コンバージョンの中でも値を設定し、コンバージョン値を最大化したい場合は、コンバージョン値の最大化(自動入札)や目標広告費用対効果(自動入札)がおすすめです。
自動入札戦略に切り替えるべきタイミング
自動入札では媒体AIがシグナルを活用してより効果的な広告配信を行うために入札価格を調整してくれています。
そのため自動入札で成果を最大化するためには「媒体AIが十分に機能するデータ量」が必要で、各プラットフォームによって基準が異なります。
例えばGoogle広告であれば、1か月で30回以上のコンバージョン(目標広告費用対効果の場合は50回以上)を獲得していることが推奨されています。
つまり、1か月で10件しかコンバージョンを獲得できない場合は、媒体AIがうまく機能しない可能性があるため自動入札よりも手動入札の方が成果が良い可能性があると言えます。
よって、自動入札に切り替えるタイミングとしては推奨される基準を超えているかどうかによって決まります。
ちなみにですが、Yahoo広告であれば、広告グループ単位で7日で20件以上のコンバージョン(目標コンバージョン単価の場合は1か月で40回以上)を獲得していることが推奨され、Meta広告(Facebook/Instagram)では、広告セットごとに1週間で50件以上のコンバージョンを獲得することが推奨されています。
【まとめ】自動入札戦略は必要なデータが溜まれば積極的に活用すべき
各プラットフォームでは広告の表示機会が発生するたびに、どの広告をどの順番で表示するかを決める「入札オークション」が行われています。
GoogleやYahoo広告などリスティング広告では、競合との入札オークションに勝つ必要があります。その際に「何を重視して入札オークションに参加するか」を決めるのが入札戦略です。
つまり、入札戦略の選び方で成果を左右すると言っても過言ではありません。
本記事でご紹介してきたように、各プラットフォームの自動入札を活用することでさらに広告成果を伸ばすことができ、手動入札と比べて広告運用にかかる工数も抑制できる利点があります。
しかし、自動入札はブラックボックスな要素が多く、公式ヘルプを読んでも分からない方が多いかと思います。
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